2023年、校名変更・共学校化したサレジアン国際学園世田谷。世界97カ国で教育活動を展開する「サレジアン・シスターズ」を母体とするカトリック・ミッション校です。「21世紀に活躍するための『世界市民力』を育む」を合言葉に、考え続ける力、言語活用力、コミュニケーション力、数学・科学リテラシー、心の教育を「5つの柱」としています。すべての教科でPBL型授業を取り入れ、生徒たち自身が自ら学び考え続ける力を培っている同校。2つのクラス制を敷いており、校内はグローバルな環境が整っています。熱く探究する生徒を育成する「本科クラス」について本科推進部部長の市橋朋之先生、グローバル社会で活躍できる人を育成する「インターナショナルクラス」についてインターナショナル推進部部長の上田かおり先生、2025年度より募集を開始する新コース「MEDICO」に関して教育研究開発部部長の田中赳裕先生に伺いました。
「研究者たる姿勢」で学ぶ本科クラスで生涯をかけられる探究課題を見つける
「生徒たちは我々教員が想定していた以上に、探究活動や思考すること、挑戦することに対して、とても前向きに取り組んでいます」と話すのは本科推進部部長の市橋朋之先生。
本科クラスの軸としているのは、生徒一人ひとりが主体的に学びに向かう姿勢を養うPBL型授業とゼミです。全教科でPBL型授業を行い、「ロジカル(理論的)」「クリティカル(批判的)」「クリエイティブ(創造的)」な思考力を育みます。教科の枠を取り払う学びを展開し、例えば国語の授業でも文化論や科学的側面などからも捉え、多角的観点を重視しています。
ゼミでは「熱く探究する生徒」を育成。1年生は、4年間探究し続けられるテーマを追求する「プレゼミ」を実施します。ロングホームルームや行事などでもその都度振り返りを行い、生徒たちは「学問とは何か」を考え、探究するための学び方を学びます。後半では「自分の好き」を深掘りすべく、「自然科学」「人文社会科学」「数理情報プログラミング」の3領域を細分化した9つのゼミから3つを選びゼミを体験します。「その中で自分が楽しいと感じるものを見極めつつ、向き不向きなども含めて体験することで次年度のゼミを決定します」(市橋先生)。最終的に600字程度の志望理由書を書き、ゼミを選択しますが「一つの物事でもどの部分に関心があるのか。“興味の根っこ”に徹底的にアプローチします」。2・3年生の「ゼミ」では、個人のテーマに基づき、教科の枠組みを超え探究を深めます。4・5年生では「ゼミEX」として、外部コンテストなどへ挑戦予定でしたが、すでに2年生が果敢にチャレンジ。生徒たちがのびのびと自分の好きを突き詰める姿に先生方は目を細めます。
本科クラス生は週8時間(うち5時間がオールイングリッシュ)の英語の授業がありますが、「サレジアン学内留学制度」で圧倒的な英語環境を体験します。インターナショナルクラスの授業とホームルームなどを通じて、アドバンスト生やインターナショナルティーチャーとふれあい、モチベーションを高めていきます。
圧倒的な英語環境の中、「英語で学び英語で考える」教育で高め合うインターナショナルクラス
「学校全体がインターナショナルな雰囲気で、多様な価値観を理解した上で判断・発信ができる生徒たちが育っています」と話すのはインターナショナル推進部部長の上田かおり先生です。英語への高いモチベーションを持つ「スタンダード」と、帰国生などを中心に英・数・理・社を英語で学ぶ「アドバンスト」の2グループで構成されるインターナショナルクラス。スタンダード生とアドバンスト生は同じクラスで学び、ペアまたはトリオを組んで互いをサポートし合う「バディシステム」を導入しています。
英語の授業は、どのクラスでもインターナショナルティーチャー(IT)によりオールイングリッシュで行われます。英語をこれから本格的に学ぶ「スタンダード」、中1の1学期中間テスト後の実力により移行する「インターミディエイト」、英語圏現地校と同等の「アドバンスト」の3レベルに分かれます。「互いに刺激し合い、スタンダードで入学した生徒も1年の2学期にはアドバンストに到達するケースも出てきました。2期生はスタンダード生に対してアドバンスト生の数が2倍なので、英語環境がさらに充実しています」と上田先生。
インターナショナルクラス独自の「S A P(Salesian Academic Program)」は週2回、ITが主導して、英語で学ぶ探究プログラムです。1年生「文化学」、2年生「環境問題」、3年生「社会問題」に取り組みます。情報収集や分析、グラフの読み取りなどに加え、グループディスカッションやディベートなどを通じて英語で思考し、世界に発信する力を身につけます。
3年生の修学旅行は、オーストラリア・シドニーで実施します。シドニー大学のキャンパスツアーをはじめ、SAPと紐づいた学びやSDGsに基づいたディスカッション、プレゼンテーションなどを行います。希望者参加型のカナダでのターム留学やアメリカ研修、シンガポール研修など、さまざまな機会を用意。4年生から海外の高校卒業資格を得られる『デュアル・ディプロマ・プログラム(DDP)』を導入する予定です。「海外大学進学を目指す生徒が多いので、DDPを通して力をつけ羽ばたいてほしいですね」(上田先生)。その他、世界に広がる兄弟校との交流なども活発に行われています。
2025年より募集開始!人間や技術に敬意を払い、社会全体へコミットするMEDICOクラスの学び
本科クラスに所属しながら、2年生から特定科目を受講できるのが、2025年度入学生からスタートする「MEDICO(メディコ)」です。「Mastery Education for Dedication with Innovation,Curiosity,Originality.」を由来とする教育プログラムで、独創性と好奇心、革新性を持って社会に貢献するために必要な技能や資質を完全習得することを目標とし、医学や科学技術への正しい理解と敬意、高いリテラシーを育みます。
「医学、データサイエンスをメインに据えていますが、理系の知見をベースとしつつも、STEAM系の教育として多分野他ジャンルに関心を寄せる生徒たちが集まることによって、非常に学問的刺激が強いコース・クラスにしていけたらと思っています。本科クラスで培った力で好奇心に則って探究し、医学と社会、データなどをつなぎ合わせながら広がりを持たせることで、生み出されるイノベーションを期待しています。イノベーションが生まれるために必要なのはオリジナリティであり、そこに至るための好奇心が必要です。それを磨き、習得していくクラスです」(教育研究開発部部長の田中赳裕先生)